CAEシステムの効果的導入と活用のために

高西デザイン解析事務所


1.
 背 景

設計の自動化ツールとして、CAD は様々な企業で利用され効果を上げてきました。最近は 3次元 CAD の普及にも弾みがついているようです。一方でコンピュータ上でシミュレーションを行い、製品の開発や改良に役立てようとする CAE についても、製品の高品質化や開発期間短縮の強い要求に合わせて、その利用は急速に拡大しつつあります。その中心的存在であるのが「有限要素法(FEM)による解析」の技術です。

CAE の利用効果は製造業界で広く認められています。第一の効果は、設計案を高価で手間のかかる試作実験で確認する以前に、コンピュータ上でシミュレーションを行うことによって、コスト削減と設計期間の短縮が図られるという点です。さらにシミュレーションでは、実験では測定不可能であったり適用が困難な条件下での検討が行え、容易に条件変更を繰り返して多数の設計案を比較検討できることが大きな利点となります。このような理由から CAE システムは、最適設計への道につながる優れた設計支援ツールであるといえます。

かつて CAE は時間と費用の高くつくものとされ、重要製品に対してのみ適用されてきました。しかし最近では WS や PC の処理スピードの向上や低価格化により、一般の製品開発にも十分適用できるものになっています。また、かつては一部の解析専門家だけが実施できた FEM 解析ですが、使いやすさに重点を置いたソフトウェアの機能向上に伴い、一般の設計技術者が取り組むことも容易になりつつあります。今日、CAE システムの利用環境は確実に向上したように思われます。

2.
 問題点

しかし、一般の設計技術者が CAE に携わることの必要性が叫ばれ、その利用環境も整ってきたとはいえ、この種のシステムは導入さえすればだれでもすぐに効果の出せるというものではありません。それは、CAE の分野は数値シミュレーションという専門分野にあたるからです。すなわち一般の設計技術者と言えども、この分野に対するある程度の専門性が要求されるのです。たとえば FEM 解析を行うとき、知識と経験からくるアプローチの差(モデル化の違い)によって、解析結果は異なってきます。この事実は、今日の最先端にあるソフトウェアとコンピュータを用いてもなお、この有益なツールから利用効果を引き出すためには、利用技術の習得が必須であることを示しています。

しかしながら、FEM をブラックボックスとして利用可能なことも事実です。たとえ FEM の理論を知らなくても、市販の FEM ソフトウェアで説明書に従って入力し計算を実行すれば、出力として変形、応力、温度、固有振動数などが得られます。これは大変便利なように思われますが、誰が行っても信頼性のある結果を得ることの保証を、ソフト側で受け持ってくれるものではありません。また、限られた設計期間内に合理的な費用と時間で結果を得ることの重要性は言うまでもありませんが、そのために解析対象物を本来の特性を失わないようにして簡略化し、効率の良い解析を心がけてモデル化をすることも重要になるのです。

3.
 トレーニングの重要性

FEM 解析作業で最も重要なのは「モデル化」の段階です。モデル化が妥当でなければ、結果は信頼のおけるものにはなりません。モデル化を担当する技術者には、解析対象に対する工学的知識に加え、ベースとなる FEM の知識と、それをモデル化に生かす判断力が必要になります。必ず言えることは、FEM の基礎知識なしに解析を行うことは非常に危険であり、管理者は技術者に対し、FEM の利用に関する教育トレーニングを決して惜しんではいけないということです。

入門者の場合は、最初から複雑な解析を行うわけではないので、高度な専門知識は必要ありません。そのため初めての方であっても、これらの基礎知識を習得することは決して困難なことではなく、短期間のトレーニングを受けた後、日常の仕事の中で十分身につけていけるものです。重要なのは、これから利用技術を身につけていくための基礎となる知識を得ることですから、基礎理論と解析技術をあわせた効果的なトレーニングを受け、基礎をしっかり固めることです。

FEM 解析の入門者が、まず必要とする3つの基礎知識が下図に示されています。それぞれの基礎知識を習得する手段は色々ありますが、次のような留意点が考えられます。

物理、数学の知識

数学については高校程度の知識、材料力学や構造力学、伝熱工学などについては工学系大学程度の知識があれば、その復習によって十分カバーできると思われます。要は(その気を出して)参考書などをもう一度ひもといて見ることです。これらは、FEM の基礎理論を学ぶ際に必要な知識であると同時に、解析結果を検討する場合にも重要な知識となります。

ハード・ソフトの知識

通常、ハードおよびソフト販売会社から操作教育が受けられます。OS などの基本操作についてはそれで十分だと思われますが、ソフトについては注意する点があります。それは、通常の初期教育では FEM をブラックボックスとして扱うという点です。もちろん初めのうちはそれで良いのですが、次のステップでは、FEM の基礎を知った上でソフトの教育を受けるのが効果的です。「操作さえ覚えれば、もう解析できるだろう」と、上司に誤解されないようにしてください。

有限要素法の知識

FEM の入門書もたくさん販売されていますが、内容的に独学はなかなか困難です。また、一部でセミナーなども開催されているようですが、一般の入門者にとって、わかりやすく実用的な内容とは限りません。世の中に FEM の優秀な専門家は多数いますが、同時に講師として入門者向けに優れたテキストを準備している方は少ないでしょう。したがって、プロの講師により的確に準備されたセミナーを受けることがベストといえます。

4.
 コンサルテーションの利用

前にも述べたように、最終的な目的は利用技術の取得です。利用技術の取得には、知識にプラスして経験を積む必要もありますが、初期の段階で、指針となるアドバイスが大変参考になるのは言うまでもありません。これらを元に実務へ発展させていく手がかりを与えてくれるのが、外部からのコンサルテーションになります。

企業が新しい技術を導入しようとするとき、その投資効果がどれくらいあるかを計るポイントは、次の4点だと考えられます。

(1)どれくらい期間が必要なのか?(導入立ち上げ期間)
(2)どのくらい費用が必要なのか?(システム購入価格)
(3)どのくらい効果が期待できるのか?(業務改善効果)
(4)どのくらい技術習得が必要なのか?(トレーニング期間/費用など)

これらのうち投資効果に最も影響を与えるのは、導入立ち上げ期間の長短であると言われています。投資効果の算定には導入費用も重要ですが、立ち上げ期間を縮めて早くシステムを使いこなすことが、効果を高めるうえで非常に重要なのです。CAE システムの効果的導入と活用のためには、第一にシステムを早く実務に適用することを目的に、外部コンサルタントの支援も検討すべきでしょう。


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